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私のNPO LIFE

続・心の余裕

ゆみちゃんは三人兄弟のまん中、年中の元気なお兄ちゃんと、1才になったばかりの弟がいて、可愛い顔とハスキーな声がなかなか魅力的な女の子だった。
お兄ちゃんが我が家の長男と同い年、官舎も同じ棟だったこともあって、子どもたちは一緒に遊ぶことが多かった。
ゆみちゃんは、今思えば反抗期だったのかも知れない。
「ダメよ」と言うと、必ずそのダメなことをしたがる。
大人を試していたのかな?
当時の私は、自分の子どもさえままならないのに、よその子どもにまで振り回されているような毎日で、よく怒ったし、たえずイライラしていた。
そんな日々だから、ゆみちゃんの存在は私にとって悩みの種だったと思う。
小さい子が遊んでいたオモチャを取っては泣かせ、訳の分からぬ幼い子のすることを
悪いと分かっていながら真似するような所があった。
何でも良く分かっているのに、と当時は思っていたけど、
ゆみちゃんは、きっと分かってはいなかっただろう。
言葉がどんなに達者でも、三才児に変わりはない。
ある日、いつものように子どもたちが遊びに来て、肝油(ゼリーのね)を見つけた。
お兄ちゃんたちが、食べると言って騒ぐので「ひとつだけ」と念を押して
ひとりにひと粒与えた。
ゆみちゃんは、「もっと食べる」と言い出した。
「これはね、お薬と同じだから沢山食べられないのよ」と言うと、
「食べる」と言って聞かない。
私はキッチンの食器棚の中に肝油の缶を納めた。
ゆみちゃんは着いてきて、「開ける」と言う。
「開けたらダメよ」と言うと、「でも、開ける」と言う。
ゆみちゃんと私の押し問答が続いた。私は腹をたてていた。小さな子を相手にである。
ゆみちゃんは、言うことを全く聞かない。
そして極め付けは、可愛いゆみちゃんから出た言葉。
「開ける!食べる!叩いてもいいよ!」
「・・・。」
そして、本当に食器棚を開けようとするゆみちゃんに、
ピシャリ!、私は手をあげた。
さっきまで威勢の良かったゆみちゃんもさすがにべそをかいて帰っていった。
その後、私はひどく落ち込んだ。
ゆみちゃんのお母さんは、おおらかな人だった。
「何にもしないのに、おばちゃんは叩いたりしないでしょう。ゆみちゃんがきっといけないことしたんじゃないの?」と言っていたそうだ。
私は余計に落ち込んだ。
他のお母さんに「そんな、相手は子どもじゃない、本気でやりあってどうするの」と
いうようなことも言われ、本当に情けなかった。
子どもとは、大人の思うようには決してならないもの。
そのことに気づくまで随分時を要した。
思うようにならない子どもとの日々を、楽しめる余裕ができたのは
ずっと、ずっと後のこと。
あの頃、私と子どもたちの社会は小さな小さなものだった。
世の中の流れがどうなっていようが、たとえ何処かの国で戦争が起きようと
そんな事とは無関係の世界に生きていたように思う。
わが子が何よりも第一であり、全てであったような。
それでいて、自分の存在の不確かさに不安を感じていた。
あの生活がもっと長く続いていたら、私はどうなっていただろう。



by hatehate2004 | 2006-02-19 22:58 | 子どもに学ぶ

悩めるNPO人の日常
by hatehate2004

2015年6月より、一部カテゴリーのみ再公開します。
子どもとの日々に何かしらお役に立てれば幸いです。

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